『コッチ。』


この子は嘆きの○ーテルか。













Trip!!〜20〜













「ほ…ホントに侵入してしまった…!」

「よくわからんが腹をくくれ鴉!」

「かぁっこいー……アレ?」


「どうした?」と叔父さんと2人が聞いてきたけど…




















が居ない……」




















その後、女子生徒がやって来たから を探す事が出来なかった。






























彼女は伊達に3年間も此処を浮遊しているワケではなかった。
今さっきまで、みんなと歩いていた階段には途中で分かれ道がある。
其処をちょいちょいと進めばホラ。簡単…










「あー…ピアノだ。」










あっという間に出会いの場に着いた。





「へー…。」





ピアノの前に座って鍵盤を開ける。


『貴女、ピアノ弾けるの?』

「え。全然。聞くのが良い。猫踏んじゃっただけ。」

『……。』

「でもピアノも良いけどオルガンも良いよね〜。特に教会にあるパイプオルガン…教会全体に広がる反響音が堪んない。」


…っと、その為に来たんじゃないって。


『早く代わってよ。』

「ちょっと待って。」


ウチと入れ替わろうとする彼女を引きとめた。


「こーゆーのは どうかな…?」

『…良いわ。ノッてあげる。』





そうしてウチはピアノを≪弾き≫始めた…

























「今日もお疲れ様ですね。」

「いやぁ〜。でも今日も1日良い日だったよ。」


後輩にあたる新米教師と一緒に廊下を歩いていた。


「どうだ。今日はオレの奢りで飯、食うか?」

「あ、良いのですか!? ご馳走になります!!」


「男同士、色々と語ろうじゃないか!」と笑いながら職員室に向かう。








































〜♪〜〜♪








































(……え。)










つい、立ち止まってしまった。


「…? どうしました??」


突然止まった俺を後輩が気にした。


「………いや。」


「何でも無い。」と答えて歩みを再開する。






























〜♪〜〜♪〜〜♪〜






























まただ…
あの曲に覚えがある。





「あれ? 誰かがピアノを弾いていますね。」





後輩もこの音を聞き取った。


「そう、だな。」


『あの事』をフと思いだしてしまう。


「先輩…? どうかしましたか??」










「悪い…先に行っててくれ。」










「先輩!?」と言う後輩を背に、俺はピアノが聞こえる部屋に走って行った…

























♪♪〜♪〜





音がハッキリ聞こえてきた。
ドアの前に立って荒い息を整える。


「………。」


恐る恐るドアノブを掴んで…















カ…チャ…















俺はゆっくりドアを開けた…















其処には見かけない女子生徒がピアノを弾いていた。
暫く弾いていたが曲も終わり、鍵盤を閉じる。





「………。」

「こんにちは。センセ。」





髪の毛の短い少女が此方を向いて微笑んだ。


「…君、生徒番号と担当教師を教えてくれないかな? …それと今さっき弾いていたのは……?」


一歩ずつ歩み寄るが、その歩幅は小さい。
髪の短い女子生徒なんて見たことが無かった。
だから番号を聞いて後で探してみようと思う。
直ぐに分かる筈だ…
しかもあの曲…一般に知られている名曲だが、あんな風な弾き方をする人間なんて俺が知る内ではたった一人しか居ない……










いや、≪居なくなった≫。










「ウチの番号ですか…?」





「んー…と。なんだっけ……?」と自分の番号を思い出している。





「あ、思い出した!」





悩んだ結果、漸く思い出す。
そして、態々 椅子から立ち上がって俺に近付いて来た。





「えーっと…○○××の……」





ちゃんと言えているから、やっぱり此処の学生だと分かった。


「そうか。分かった。」


後は曲の事を聞いて軽く流して帰ろう…
誰かに似ている弾き方をする人だって居るからな。




















「担当教師は△×先生。」




















ん、待てよ…
その教師は去年に此処を出て行った筈だ。




















「んで、今さっきの曲は……








































先生、私の演奏…忘れたの…?」








































目の前に居るのは黒髪の生徒なのに…






























何故か≪アイツ≫が過った……




















「センセ…酷いよ……あんなに愛し合っていたのに………」










金縛りに遭ったような衝撃。
だ、誰なんだ…コイツは……










お、お前は…いった…い……?」










唇が震える。
逃げだす事も出来ずに突っ立っていると、生徒は俺に凭れかかった。






























「あの時…此処で『卒業したら結婚しよう。』と言ってくれたのに……」






























『先生…私、もうこんな生活は嫌なの!!』






























『卒業したら結婚しよう…そして、知らない土地で新たな生活を送ろう…』






























「両親の言い成りの人生が嫌だって言ったら先生が傍で抱きしめてくれたのに……」






























俺を触る手がどんどん上に上がって行く。
やっぱりコイツは……






























「 イザベル …」






























「なぁに? ディン ?』






























黒髪の少女から完全に イザベル の姿になっていた……






























「やっと思い出してくれたの!」と笑顔を俺に向けてくる。





「な、なんでお前が此処に……?」





お前は死んだ筈だ。





そう言葉を続けると イザベル の手が俺の頬を撫でるのを止めた。


「『なんで』……? 決まっているでショウ……?」








































アナタ ヲ ムカエ ニ キタノ ……








































イザベル の顔は正しく死神の顔だった…






























ドンッと気が付けば俺は押し倒されていた。
そして イザベル の両手は俺の首に……





「約束したよね…? 一緒に暮らそうって……なのに……っっ!!!」

























『あ、せんs『 ディン 君、結婚おめでとう!』…!?』


廊下で先生を見つけて走り寄ろうとした私の前に他の先生が祝言をする。


『まさか君があの……』


その会話には知らない女の人の名前が出た。
だれ…その人……
その日の放課後、私は ディン とこの部屋で最後の会話をした。










『…って誰? しかも来週 結婚って……。』

『あー…聞いてたのか?』


『めんどくせぇ…』と呟いた彼。
私は彼に抱きついた。


『嘘よね!? だって私達、あんなに愛し合って…キャ!』















私は彼の片腕によって離された。















『うるさいな。』


見たことも無い彼の顔。


『あ〜っ、クソ。バレてしまったな…』


懐から煙草を出して吸い始めた。


『ど、ゆ…こと……?』


フゥーと息を吐いて細くなった目で私を見る。


『どうもこうも…お前が只の≪お遊び≫だったワケ。』










『禁断の恋はどうだった?』と私に聞いてくる…















遊び…私…は……















私の目から涙が零れた。















『酷い! 私は貴方の事を愛していたのにっ!!』


『誰かに話してやる!』と私はこの部屋を出ようとした。
だけど ディン に腕を掴まれて窓の外に連れて行かれた。


『いやっ! 離して!!』

『駄目だ。』





放課後の校舎にはあまり人が居ない…
だから叫んでも気づかれなかった。





『その事を言われると俺の人生が危ないから…なっ!』

『 !? 』





上半身が空中に出る。
夕方の風が冷たい。





『お前、両親とあんまり仲良く無かったからな…』





彼の顔が見えない。
だって私は少し遠い地面を見ているから。





『≪この暮らしが嫌になった心の弱いワタシは死にます≫…て感じかなぁ?』






























ドンッ






























『サヨウナラ。』






























私の記憶は此処まで……

























「ねぇ…その後どうなった? あの女と仲良くやっているの…?」

「かっ……はっ……!」


力強く首を絞められて俺の意識は朦朧してきた。
クソ…! やっぱり来るんじゃなかった……!!


「苦しい? …センセェ〜、あの時 私も苦しかったよ……?」





さらに力が籠り…






























もう……駄、目………だ…………






























俺は目を閉じた…






























「 !? っや!!」










新鮮な空気が入って来た。
俺は思い切り吸いこんで咽てしまう。





「ごほっ! ごほっ!!」

「なんで! 止めて!!」





急に一人で暴れだした イザベル 。
俺の上で今度は自分の頭に手を置いた。





「折角のチャンスなのに! いやぁっっ!!!」





何が起こっているのかは分からない。
でも今逃げないと今度は本当に死んでしまう!!!





「ク…っそたれ!!」





最大限の力を振り絞って イザベル を突き飛ばして全速力で逃げた。











後ろで彼女の叫び声を聞いた……

























「いやぁぁぁぁ!!!』





ウチは無理やり彼女を引き離した。


(あー…危ねぇ……)


完全に離れて彼女は凄い顔で私の首を絞める。





「うっ!」

『なんで! なんで邪魔するの!?!?』





今さっきの教師みたいな状態になってしまった。
でも彼女がウチを触れるように、ウチも彼女に触れるワケなんで、思い切り首を絞めている両手に爪をたててガッと下に向けて引っ掻いた。





『っ!!』





彼女はウチから手を引いた。




















「なんで お化けの癖に痛がる……って、あぁ…≪記憶≫から思い出しているんだ。」




















今、分かった。





さてと…さっさと消えてもらいますか。





ずっと睨む彼女にウチは話しかけた。




















「あんねぇ、生きている人間に手を降して良いのは生きている人間だけだからね。」




















「だからアンタは駄目。」と言うと彼女は騒ぐ。





『どうして!? 私は彼に殺されたのに!! 私にだって手を降して良い権利はある筈よ!!!』





「残念ながら死んだ人間にそんな権利はない。」





迷惑なんだよ。





「死んだらさっさと逝く! 生きている人間に害を成してはイカン!!」





ビシッと指を指す。
…死んでる人間だったら良いと思う。





『そんなの不公平よっ!』





「ああ、この世は不公平の塊だ。」










天才と凡才。





金持ちと貧乏人。





障害を持って生まれる人、健全な人…









「数を挙げると言いきれない程に不公平がある。」










其の中でもウチ等は生きているんだ。










「言っちゃあ悪いけど、アンタは負け組。」





『 !! 』





「金持ちで、両親が居て、友達が居て…言い成りになるのは嫌? …じゃあ、ちゃんと言えばよかったんじゃん。」





悪いけど、彼女の≪過去≫を視た。





両親の話しばかり聞いて自分は何も言い出せていない。





何か言われたら直ぐに『はい。』…










「はっきり言うべきだった…『私は嫌!』って。アレは自分から言い成りになってるモンじゃん。」










『………。』










「全ては其処から。アンタがあの教師を恨むのは…分かるけどさ、その前に先ず、自分をどうにかすれば良かったんじゃないの…?」















『…ック…ッ…』















彼女は泣き始めた。















其れはやっぱり≪記憶≫の中の涙か…それとも……





『くっ、やしっ…!』





「悔しいよね。」





ウチは彼女を抱きしめた。





『踏みだせなかった自分が悔しい!』と叫ぶ。





『踏み出せたら! …わたっし!!』





「そだね。こうなって なかったね。」





『…っでも! 言ってしまったら両親から突き離されてしまうようで……怖かった!!』





「うん、うん。」


沢山の後悔が溢れだした。






























でも、もうお終い。






























「…次、生まれ変わったなら悔いの無い人生を……」






























牧師でもなんでもないウチがそう呟くと、彼女は泣きながら消えて逝った……








































『あの時こうしていたら!』






























そう言う人は沢山いる。


…ウチもその中の一人。


でも、それは仕方が無い。


未来はいつも不確定。


後悔しても其れはもう≪過去≫だ。






























だから…せめて≪今≫を後悔しないように……








































唯一、彼女が好きだったピアノの傍に行き、椅子に座わり直してボーっとしていた。






























ガチャ…






























誰かがこの部屋に入って来る……

























「あ。」





オレとリーオがいつものように部屋に入ると先客が居た。
ソイツ…女生徒は鍵盤も開けないでじっと座っているだけ。










「…ねぇ。」










女生徒は俺たちに顔を向けずに話し始める。

























「3年前に此処から自殺した女子生徒の話しって知ってる…?」






























「あーなんか あったね。そんな話。」


リーオが思い出すように呟く。
オレは其の様な類の話しは下らな過ぎて嫌いだ。


「其れがどうした?其れは只の噂だろ。」


実は噂になっただけで本当の事は誰も知らない。


「なんだ。お前、オカルトとかそんな研究でもしてるのか。」


「下らない理由でこの部屋に入って来るな。」と言うと。リーオが殴る。


「ってぇな!」

「エリオットが悪いよ。」


ったく、なんだよ!
何か言おうとしたが、女生徒が遮った。






























「≪居た≫……よ…」






























「はぁ?」


リーオから目を離して女生徒に向ける。
そして、顔を下げて静かに言った。










「彼女は確かに≪居た≫んだ……」






























だからさ…






























顔を挙げてやっと此方を向いた。










女生徒の瞳…左目があのムカツク義兄を思い浮かべた。





「…ウチ、ピアノ弾けんからさ……。」






























立ち上がって窓側に移動する。






























「『彼女』の為の鎮魂歌を弾いてあげて……」






























「やって あげなよ。」とリーオが無理強いをする。
女生徒は女生徒で悲しそうな顔をしてオレを見る。




















「…っち、しょうがないな。」




















オレは椅子に腰かけて鍵盤を開ける。






























そして音を奏で始めた。






























女生徒が「ありがと…」と言ったのはオレの気のせいだろう…





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あとがき

私んトコのスクロールは空気を読んでくれるんで……長くてスミマセン。
オリジの話になると長くなってしまいますね。
なんで?(笑)
しかも当初は遊ばれて自殺…みたいな設定が頭の中にあったのですが…
ちょいちょい変わるのが宮塚クオリティ…!!
しかも最後にエリオットを出しましたが…
リーオの台詞のほうがポンポン打てたのは何故だ?